訪問歯科では、患者さんのご自宅や施設に伺って、むし歯の治療や口腔ケア、入れ歯(義歯)の調整などを行っています。
ある日の訪問診療でのこと。
「今日は入れ歯の調整をしましょう」
そうお話しして、いざ入れ歯を確認しようとすると……
「あれ? 入れ歯がない!」
いつも入れているはずの義歯ケースを見ても、ありません。
「どこに置いたんでしょう?」
そこから、患者さんやご家族と一緒に大捜索が始まりました。
まずは台所。
……ない。
洗面所。
……ない。
クローゼット、食器棚、お風呂場。
どこにもありません。
「もしかして寝るときに外したのかも?」
今度はベッドの中、布団の間、そしてベッドの下まで探します。
それでも、ない。
「いったい、どこへ行ってしまったんだろう?」
そして最後に、まさかと思いながら開けた場所が——
冷蔵庫。
「あった!!」
なんと、入れ歯は冷蔵庫の中に大切にしまわれていました。
訪問歯科の現場では、ときどき思いもよらない場所から入れ歯が見つかることがあります。
特にご高齢の方では、「なくさないように」と大切にしまった結果、ご本人もどこに置いたのかわからなくなってしまうことがあります。
入れ歯は「置き場所」を決めましょう
入れ歯は患者さんにとって大切なものです。
保険診療では、原則として新しい入れ歯を作ったあと、一定期間は新たな入れ歯を作製できないというルールがあります。
そのため、「なくしてしまったから、すぐ新しいものを作ればいい」というわけにはいかない場合があります。
入れ歯を外したら、必ず決めた義歯ケースに入れる。
そして、ご本人だけでなく、ご家族や介護をされる方も「入れ歯の定位置」を共有しておくことをおすすめします。
入れ歯は、食べること、話すこと、そして毎日の生活を支える大切な道具です。
「入れ歯のおうちは、ここ」
そんなふうに置き場所をひとつ決めておくだけでも、紛失を防ぐことにつながります。
ちなみに——
冷蔵庫を開けて入れ歯を見つけた瞬間は、みんなでホッとしたのと同時に、ちょっと笑ってしまった訪問歯科の一日でした。